※本記事は2026年7月時点の制度をもとに、相続・贈与の基本を初心者向けにまとめたものです。個別の判断については、税理士などの専門家へご相談ください。
投資を長く続けて資産が増えてくると、いつか考えることになるのが、 「この資産を家族へどう引き継ぐか」です。
現金や不動産だけでなく、株式や投資信託も相続税の対象になる財産です。
相続税や贈与税の仕組みを知らないまま資産を移すと、思わぬ税金がかかったり、家族間のトラブルにつながったりする可能性があります。
一方で、税金を減らすことだけを目的に資産を早く渡しすぎると、自分たちの老後資金が不足するかもしれません。
この記事では、Xで解説してきた株用語323〜329をまとめて、 相続税・贈与税・生前贈与・投資資産の相続など、資産移転の基本を分かりやすく整理します。
この記事で分かること
- 相続税がかかる基本的な仕組み
- 贈与税と年間110万円の基礎控除
- 暦年贈与と相続時精算課税制度の違い
- 生前贈与に利用できる主な非課税制度
- 株式や投資信託を相続するときの注意点
- 資産移転を考えるときの基本的な順番
※全体を通して読む必要はありません。気になる項目から読んでいただけます。
323|相続税の基礎
相続税とは
相続税とは、亡くなった人から財産を受け継いだときに、その財産額などに応じてかかる税金です。
相続税の対象になる主な財産には、次のようなものがあります。
- 現金・預貯金
- 土地・建物
- 株式・投資信託・債券
- 生命保険金や死亡退職金のうち一定額を超える部分
- 貸付金や著作権など、金銭的な価値のある権利
相続税の基礎控除
相続財産があっても、必ず相続税がかかるわけではありません。
相続税には、次の基礎控除があります。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人なら、基礎控除は次のとおりです。
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
正味の相続財産などが基礎控除の範囲内であれば、原則として相続税はかかりません。
配偶者には税額軽減がある
配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、 1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません。
ただし、この制度を利用するために相続税の申告が必要になる場合があります。
また、配偶者へ財産を多く移せば必ず有利とは限りません。その後に配偶者が亡くなったときの二次相続まで考えることが大切です。
ポイント
相続税は遺産総額だけで決まるわけではありません。法定相続人の数、財産の分け方、各種特例などによって変わります。
324|贈与税
贈与税とは
贈与税とは、個人から財産を無償でもらったときに、原則として財産を受け取った人にかかる税金です。
対象になる財産は現金だけではありません。
- 預貯金
- 株式・投資信託
- 土地・建物
- 自動車
- 保険料を負担していない生命保険金など
贈与税には、主に次の2つの課税方法があります。
- 暦年課税
- 相続時精算課税
どちらを選ぶかによって、贈与時と相続時の税金の計算が変わります。
生活費や教育費なら何でも非課税ではない
扶養義務者から受け取る通常必要な生活費や教育費は、必要な都度、その費用に直接使う場合には贈与税がかかりません。
しかし、数年分をまとめて受け取り、使わずに預金したり投資に回したりした場合は、贈与税の対象になる可能性があります。
325|暦年贈与
1年間に受け取った贈与で計算する
暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の合計額をもとに、贈与税を計算する方法です。
暦年課税には、受贈者1人につき年間110万円の基礎控除があります。
その年に受け取った贈与の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税はかからず、贈与税の申告も必要ありません。
110万円は贈与者ごとではない
年間110万円の基礎控除は、財産を渡した人ごとではなく、 財産を受け取った人ごとに計算します。
例えば、同じ年に父から100万円、母から100万円を受け取った場合、受け取った合計額は200万円です。
200万円から基礎控除110万円を差し引いた90万円が、贈与税の課税対象になります。
毎年同じ贈与を続ける場合の注意点
毎年110万円以下であっても、最初から「10年間、毎年100万円を渡す」と約束していた場合は、定期贈与と判断される可能性があります。
暦年贈与を行う場合は、次のような記録を残しておくことが大切です。
- 贈与のたびに贈与契約書を作成する
- 現金手渡しではなく銀行振込を利用する
- 受贈者本人が通帳や口座を管理する
- 贈与した日付・金額・目的を記録する
相続前の贈与は相続財産に加算されることがある
暦年課税による贈与財産のうち、一定期間内に被相続人から贈与を受けた財産は、相続税の計算上、相続財産に加算される場合があります。
2024年1月1日以後の贈与については、加算対象期間が段階的に延長され、最終的に相続開始前7年以内になります。
ただし、延長された4年間に受けた贈与については、合計100万円まで相続財産に加算されません。
注意点
「年間110万円以下なら、将来の相続税にも必ず影響しない」という意味ではありません。贈与した時期や相続との関係も確認する必要があります。
326|相続時精算課税制度
贈与時と相続時をまとめて精算する制度
相続時精算課税制度とは、生前に財産を贈与し、将来その贈与者が亡くなったときに、贈与した財産を相続財産へ加えて相続税を計算する制度です。
原則として、次のような人が対象になります。
- 贈与者:贈与年の1月1日時点で60歳以上の父母や祖父母など
- 受贈者:贈与年の1月1日時点で18歳以上の推定相続人である子や孫など
年間110万円の基礎控除
2024年1月1日以後の贈与から、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられました。
この基礎控除の範囲内で受け取った財産は、原則として贈与税の申告が不要で、将来の相続税の課税価格にも加算されません。
2,500万円の特別控除
年間110万円の基礎控除を超えた部分については、累計2,500万円まで特別控除を利用できます。
特別控除を超えた部分には、原則として一律20%の贈与税がかかります。
ただし、年間110万円を超えて贈与された財産は、原則として贈与時の価額をもとに、将来の相続税の計算へ加えられます。
一度選ぶと暦年課税へ戻せない
相続時精算課税は、贈与者ごとに選択できます。
ただし、一度選択すると、その贈与者からの贈与については、原則として暦年課税へ戻すことができません。
制度を選ぶときは、目の前の贈与税だけでなく、将来の相続税まで試算する必要があります。
暦年課税との主な違い
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 年間の基礎控除 | 110万円 | 110万円 |
| 基礎控除を超えた部分 | 累進税率で計算 | 累計2,500万円の特別控除後、原則20% |
| 相続時の扱い | 一定期間内の贈与を加算 | 基礎控除後の贈与額を原則加算 |
| 制度変更 | 要件を満たせば相続時精算課税を選択可能 | 選択後は同じ贈与者について暦年課税へ戻せない |
327|生前贈与の非課税枠
非課税制度にはそれぞれ条件がある
生前贈与には年間110万円の基礎控除のほか、目的に応じた非課税制度があります。
主な制度は次のとおりです。
住宅取得等資金の贈与
父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得・増改築に使う資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、次の金額まで贈与税が非課税になります。
- 省エネ等住宅:最大1,000万円
- それ以外の住宅:最大500万円
現行制度の対象期間は、2024年1月1日から2026年12月31日までです。
非課税額の範囲内でも、制度を利用するための贈与税申告が必要です。
結婚・子育て資金の一括贈与
父母や祖父母などの直系尊属から、結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば最大1,000万円まで非課税となる制度があります。
このうち、結婚に関する費用の非課税限度額は300万円です。
現行制度の適用期限は、2027年3月31日までです。
教育資金の一括贈与制度は終了
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度は、2026年3月31日で新規の適用を終了しました。
終了前に契約して拠出された資金については、契約に基づく管理や精算が引き続き必要です。
夫婦間で居住用不動産を贈与する場合
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその取得資金を贈与した場合、一定の要件を満たせば、基礎控除110万円とは別に最大2,000万円の配偶者控除を利用できる場合があります。
ただし、不動産取得税や登録免許税、将来の相続なども含めて判断する必要があります。
大切な考え方
「非課税枠があるから贈与する」のではなく、住宅取得や子育てなど、実際の資金需要に合う制度を選ぶことが大切です。
328|投資資産の相続
株式や投資信託も相続財産になる
証券口座で保有している株式、投資信託、ETF、債券なども相続財産です。
相続が発生した場合は、証券会社へ連絡し、相続人への名義移管などの手続きを行います。
証券口座のIDやパスワードを家族へ渡して、相続人が勝手に売買することは避けましょう。正式な相続手続きが必要です。
上場株式の相続税評価
上場株式は、原則として次の4つのうち、最も低い価額を使って評価します。
- 相続開始日の最終価格
- 相続開始月の毎日の最終価格の平均額
- 相続開始月の前月の毎日の最終価格の平均額
- 相続開始月の前々月の毎日の最終価格の平均額
相続開始日が休場日などで最終価格がない場合は、一定のルールによって評価します。
NISA口座はそのまま引き継げない
NISA口座を開設している人が亡くなった場合、相続人は金融機関へ 「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要があります。
NISA口座のまま相続人へ引き継ぐことはできません。
相続した株式や投資信託は、相続人の特定口座または一般口座などへ移管することになります。相続人自身のNISA口座へ直接移すことはできません。
家族が資産の存在を知らないリスク
投資資産は通帳がない場合も多く、家族が証券口座の存在を知らなければ、相続手続きに時間がかかります。
相続に備えて、次の情報を整理しておくと安心です。
- 利用している証券会社名
- 保有している口座の種類
- 株式・投資信託などの保有状況
- 配当金の受取方法
- 問い合わせ先
- 遺言書やエンディングノートの保管場所
ただし、パスワードや暗証番号まで家族全員が見られる場所に残すと、防犯上のリスクがあります。
「どこに資産があるか分かる状態」と「第三者が自由に操作できない状態」の両方を整えることが大切です。
329|資産移転の最適戦略
税金だけで決めない
資産移転の最適な方法は、全員に共通するものではありません。
資産額、家族構成、年齢、生活費、住宅、介護、相続人同士の関係などによって変わります。
まずは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
①自分たちの老後資金を確保する
生前贈与を優先しすぎて、自分や配偶者の生活費、医療費、介護費が不足しては本末転倒です。
必要な老後資金と生活防衛資金を残したうえで、余裕資金から資産移転を考えます。
②保有財産を一覧にする
現金・預貯金・不動産・保険・株式・投資信託・負債などを一覧にします。
財産の全体像が分からなければ、相続税の概算や適切な分け方も判断できません。
③誰に何を引き継ぐか考える
税金を抑えることだけでなく、相続人が管理しやすい財産かどうかも重要です。
例えば、投資経験のない家族へ多数の個別株を残すより、資産内容を整理し、家族が理解できる形にしておく方がよい場合もあります。
④生前贈与と相続を比較する
暦年贈与、相続時精算課税、住宅取得等資金の非課税制度などを比較します。
贈与税だけでなく、将来の相続税、不動産取得税、登録免許税、譲渡時の税金なども含めて考える必要があります。
⑤家族と話し合う
本人にとって公平な分け方でも、相続人全員が同じように感じるとは限りません。
資産の内容や考え方を元気なうちに家族へ伝えておくことは、税金対策以上に大切です。
⑥必要に応じて専門家へ相談する
次のような場合は、早めに税理士、司法書士、弁護士などへ相談することをおすすめします。
- 相続財産が基礎控除を超えそう
- 不動産や非上場株式がある
- 相続人が多い
- 家族関係が複雑
- 相続時精算課税を検討している
- 複数年にわたる生前贈与を行いたい
- 遺言書を作成したい
資産移転で避けたい3つの考え方
1.年間110万円以下なら何をしても問題ない
名義だけを子どもや孫に変え、贈与者が口座や通帳を管理していると、贈与が成立していないと判断される可能性があります。
2.非課税制度は使わないと損
非課税枠があっても、贈与後に自分の生活資金が不足するなら適切な選択とはいえません。
3.税金が少なければ最適
税負担を抑えられても、財産の分け方をめぐって家族関係が悪化しては意味がありません。
資産移転では、 税金・老後の安心・家族の納得を合わせて考えることが大切です。
よくある質問
年間110万円以下なら贈与税の申告は不要ですか?
暦年課税では、その年に受け取った贈与の合計額が110万円以下なら、原則として申告は不要です。
ただし、特例制度を利用する場合や、過去から相続時精算課税を選択している場合など、別の手続きが必要になることがあります。
110万円は父と母からそれぞれ受け取れますか?
110万円は贈与者ごとではなく、受贈者ごとの基礎控除です。
父母など複数の人から受け取った場合は、その年の贈与額を合計して計算します。
相続税がかからない家庭なら生前贈与は不要ですか?
税金対策だけを目的にするなら、急いで贈与する必要がない場合もあります。
一方、住宅購入の支援や、若い世代が必要とする時期に資金を渡すことには、税金以外の意味があります。
株式は亡くなる前に売却した方がよいですか?
一律に売却した方がよいとはいえません。
保有銘柄、含み益、配当、相続人の投資経験、納税資金などを確認したうえで判断します。相場の上下だけを理由に、慌てて売却する必要はありません。
まとめ|資産移転は早めの整理と家族との共有が大切
今回の株用語323〜329では、相続・贈与と資産移転の基本を確認しました。
- 323|相続税の基礎
- 324|贈与税
- 325|暦年贈与
- 326|相続時精算課税制度
- 327|生前贈与の非課税枠
- 328|投資資産の相続
- 329|資産移転の最適戦略
相続や贈与は、単に税金を減らすための制度ではありません。
自分たちの生活を守りながら、築いた資産を家族へどうつなぐかを考えることが本来の目的です。
まずは、
- 保有資産を一覧にする
- 老後に必要なお金を確認する
- 家族へ資産の保管場所を伝える
- 必要に応じて専門家へ相談する
という基本から始めてみましょう。
税金だけでなく、家族の安心や納得まで含めて考えることが、長期的に見た資産移転の大切なポイントです。
相続・贈与の適切な方法は、資産状況や家族構成によって異なります。具体的な手続きや税額については、税理士などの専門家へご確認ください。
相続・贈与を考える前に、老後資金と資産形成も整理しておきましょう
資産を家族へ引き継ぐためには、まず自分たちの老後資金と資産形成を整えておくことが大切です。


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