公開:2025-10-26|更新:2025-10-26|執筆:よよみり
📘 この記事について
リスク管理シリーズ第3回です。
第1回:分散投資とは?/第2回:リバランス実践ガイド
📘 この記事で分かること
損切りが必要な理由:50代は大きな損失を避ける
2本柱のルール:価格ルール+時間ルールの基本
高配当株を売らない派のリスク管理法:減配・業績悪化など「前提崩れ」時だけ対応
実践ステップ:5つの手順で迷わない
よくある失敗:塩漬けを防ぐ対策
チェックリスト:保存版で何度でも確認
⚠️ ご注意:
本記事で解説する「損切りルール」は、短期〜中期の値動きがある銘柄やテーマ株向けの内容です。
著者のように高配当株を長期保有(売らない)方針の方は、原則として「損切り」対象外です。
高配当株は「減配・業績悪化」など前提が崩れた場合のみ検討してください。
1. なぜ損切りが必要?
損切りは“退場を防ぐための保険”です。50代からの投資では、取り返しのつかない損失を避けることが最優先になります。
- 致命傷を避ける:退職が近い50代はドローダウンが命取り
💡 ドローダウンとは?
ドローダウンとは、資産がピークからどれだけ減ったか(下落率)を示す指標です。投資リスクを可視化する代表的な数値で、下落の深さを客観的に把握できます。
| ドローダウン幅 | リスクの目安 |
|---|---|
| 5〜10% | 安定的(インデックス・債券中心) |
| 20〜30% | やや高リスク(株式中心) |
| 50%以上 | 非常に高リスク(集中・レバレッジ) |
例えば、資産が1000万円→900万円に下がった場合、ドローダウンは10%です。
50%下落すると元に戻すには+100%の上昇が必要。だからこそ「致命傷を避ける」が重要になります。
- 機会損失を防ぐ:資金が塩漬けになる前に動かす
- 感情のブレを抑える:ルール化で迷いを減らす
2. 2本柱のルール設計
感情に左右されず売却判断できるよう、価格ルールと時間ルールの2本柱を設けます。
損切りルールは「価格ルール」と「時間ルール」の2本柱で設計します。
この2つを決めておくだけで、感情に流されずに冷静な判断ができます。
| 柱 | 内容 | 初期の目安 |
|---|---|---|
| 価格ルール | 購入価格から−◯%で自動的に売る | 個別株:−7〜10%/ETF:−5〜8% |
| 時間ルール | ◯ヶ月で期待シナリオ未達なら売却を検討 | 個別株:3〜6か月/テーマ株:1〜3か月 |
📘 補足:投資信託の積立は原則「損切り対象外」です。
テーマ株とは?
一時的な話題や政策(例:AI・EV・防衛・再生医療など)に関連して注目される銘柄。
値動きが大きく短期トレンドで人気が集中するため、早めの損切りルールが有効です。
高配当株や長期保有株はこの限りではなく、減配・業績悪化など「前提崩れ」時のみが売却検討ラインです。
3. 高配当株は“売らない”という選択
筆者(よよみり)は、高配当株を「配当を得るための資産」と位置づけています。購入後の株価は気にせず、企業の本質が変わらない限り原則売らない方針です。
- 目的は値上がり益ではなく安定した配当収入
- タイミング投資で購入後は「配当マシン」として保有
- 減配や業績悪化など前提が崩れた場合のみ検討
💬 筆者は「高配当株=配当を生むキャッシュフロー資産」として保有。短期の値動きではなく、配当の持続性で判断しています。
4. 実践ステップ
- 購入時に「理由・前提・ルール」をメモ
- 価格アラート設定(証券アプリ)
- 到達時は淡々と執行(逆指値注文)
- 売却理由と学びを記録
- 次に活かす(ポートフォリオ再配分)

| 銘柄を購入した | |
| ↓ | |
| 価格ルール到達? (購入価格から−8%) | |
| ✅ YES 損切り | ❌ NO 継続保有 |
| ↓ | |
| 時間ルール到達? (保有して3ヶ月経過) | |
| ✅ YES 損切り ❌ NO 継続保有 | |
図1:損切り判断フローチャート
価格ルールと時間ルールの2本柱で判断
🔍 ポイント:この損切りフローは「価格」と「時間」という2つの客観的指標で判断します。
感情ではなく、ルールに従うことで損失を最小限に抑え、次の投資チャンスを活かせます。
5. よくある失敗と対策
- 「戻るはず」で塩漬け → 書面化したルールで防ぐ
- 損切り幅が広すぎる → 7〜10%を目安に
- 都度ルール変更 → 年1回のみ見直す
6. チェックリスト(保存版)
- □ 価格ルール:−8%
- □ 時間ルール:3か月
- □ 前提崩れ条件をメモ(減配・業績悪化)
- □ 逆指値 or アラート設定済み
- □ 売買理由を1行メモに残す
損切りメモ(価格ルール・時間ルール・前提崩れを記録するテンプレ)
| No | 銘柄名 | 証券コード | 購入日 | 購入価格 | 損切り価格(−○%) | 時間ルール | 前提崩れ条件 | 売却日 | 売却価格 | 損益 | 判断理由・メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | JT | 2914 | 2025/10/01 | 4,000 | 3,680(−8%) | 3か月 | 減配/業績悪化/長期下落 | 2025/11/15 | 3,720 | -7% | 回復鈍く撤退、正解 |
| 2 | (銘柄) | (コード) | YYYY/MM/DD | —- | —-(−○%) | (○か月) | (前提崩れ条件) | YYYY/MM/DD | —- | –% | (一言メモ) |
※「損切り価格」は購入価格×(1−損切り%)で算出(例:4,000×(1−0.08)=3,680)/ 記録は週1回更新がおすすめ。
7. よくある質問
Q. 高配当株も損切り対象ですか?
A. 筆者は原則売りません。配当が安定していれば保有継続。減配・業績悪化時のみ見直し。
Q. 投資信託は損切りしますか?
A. 長期積立は損切り対象外。商品入替時のみ検討。
Q. 含み益からの下落はどう対応しますか?
A. 「トレーリング方式(トレーリングストップ)」を使うのが効果的です。
株価が上がるたびに損切りライン(ストップライン)を自動で引き上げる方法で、 上昇中は利益を伸ばしつつ、下落に転じた時に自動で売却されます。 トレーリング方式のイメージ(例:−10%ルール)
| 状況 | 株価 | 損切りライン(−10%) | 結果 |
|---|---|---|---|
| 購入時 | 1,000円 | 900円 | 初期設定 |
| 上昇 | 1,200円 | 1,080円 | ライン自動引き上げ |
| 上昇 | 1,400円 | 1,260円 | さらに上昇 |
| 下落(1,260円到達) | 1,260円 | 1,260円 | 自動売却(利益確定) |
📈 特徴まとめ
- 株価上昇中は損切りラインが自動で上がる
- 下落時は設定%下落で自動売却(利益確定)
- 「利益を伸ばしながら損失を限定」できる
⚠️ 注意:
トレーリング方式は短中期の値上がり益狙い向けです。
高配当株のような長期保有型銘柄には不向きで、原則「売らない」方針を貫く場合は不要です。
※本記事は情報提供であり、特定銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身で。


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